今回のコラムでは、不貞慰謝料相場について触れた上で、皆様が気になされている事項(面談時等でよく聞かれることであったり、弁護士以外の方から私が確認されることの多い事項です)のご回答をさせて頂ければと思います。
このページの目次
1 不貞慰謝料の相場
「相場」とは何かというとかなり難しいのですが、今回は多くの事案で該当する賠償金額と定義させて頂きます。その上で、相場について概観させて頂きます。
(1) 不貞慰謝料の特殊性
そもそも、かなり難しい問題を孕んでいます。一般に法律上の請求金額となると損害額を立証することになります。
損害については、実務上よく言われるのが、この行為が起こった際と起こらなかった際の差額を見ていくことになります。この考え方をベースにすると、「慰謝料」は感情的な部分が多く、ほとんどその差額を明確に出すことが出来ません。その観点から、多くの場合実務上の慣例で評価されることがほとんどです。この代表的なものが怪我による結果に対しての慰謝料でこれについてはある程度画一した基準(実務家が参照する基準が存在します)を前提に金額が決まっていきます。
ここからが不貞慰謝料の問題なのですが、これについては画一的な決まりがありません。よくも悪くも過去の裁判例を前提にして判断されており、かなり裁判官の肌感によって変わってくるというのが正直なところです。
端的に言うと、不貞行為に対する悪感情をどの程度裁判官が持っているかで変わってくる可能性があるということです。
(2) 不貞慰謝料で実際に受け取ることが出来る可能性の高い金額
ア 対配偶者
少なくとも、弁護士が就いた場合は、いわゆる裁判になった場合の金額を前提に交渉をすることがほとんどです。理由としては、これとかけ離れた金額になるぐらいであれば、請求する側が裁判をすればいいためです。
裁判所は、不貞行為があったとして配偶者が一番の原因をもっていると考えているようです(現にそのことを明示している裁判例もあります)。その点から、後述する不貞第三者よりも責任が重い(金額が高くなる)とみているようです。
その前提で当該不貞行為によって、離婚すると多くの事案で200万円を中心に±100万円となっているというのが私の肌感です。他方で、離婚しないと配偶者には事実上請求されないことが多いです。
イ 対不貞第三者
前述の前提でいうと、こちらは、個別事情によりますが、100万円を中心に±100万円といったところでしょうか。
こちらは、離婚していない場合、している場合の請求がありますが、離婚していれば上記レンジの上の方で、他方でこれをしていなければ下がってくるというのが私のイメージです。
2 よくあるご質問
(1) 地域差があるのか
まず、裁判にした場合です。
これについて、聞かれますが私は過去に九州から東京までの事案を見てきましたが、地域だけで金額が変わるということはありません。この理由としては、裁判官は概ね2年程度の全国転勤である程度地方によるブレが無いようにされております。
他方で、協議の場合になると、履行可能性といった点で、お金を持っている都市部の方が裁判に踏み切りやすい、また裁判されたくない動機づけが生じやすいの2面から金額がある程度大きくなる可能性が出てきます。ただ、これも地域格差というよりは、そのような特性をもつ人が多いという事実を一つ挟んでいるので、地域差が直ちに原因となっていないというのが私の思うところです。
(2) 芸能人やスポーツ選手といった人たちはなぜ高額になっているのか
そもそも、ニュース報道が正しいかはおいておくとして、仮に事実であれば、前提として裁判をしない解決をしている可能性が高いです。というのも先ほど述べたとおり、裁判になると裁判官毎に変わるにせよ概ね相場の範囲に収まる可能性が少なくありません。その前提を踏まえるとみなさまも分かる通り、裁判をしないことが少なくないということです。裁判をすると時間も労力もかかるのである程度お金を支払って終わりにするという方が少なくないのが現状です。そうなると相場とは別の要素で解決になっています。
3 まとめ
今回は、不貞行為のみなさまが気になされていると思われるところを主としてご説明差し上げました。
これ以外でも気になるところはあると思いますし、特にご自身の事案になってくるとそれもより一層かと思います。中村法律事務所では、不貞の慰謝料請求についても請求する方、された方いずれも初回相談無料で対応しております。お気軽にお問い合わせください。