今回のコラムでは、少し前にニュースになっていた福原愛さんの紛争について、同種の事案における日本の裁判所の判断を念頭において、審理の実態を少し概観していきたいと思います。なお、本記事はあくまで日本の子の紛争に対する審理状況を概観するものですのでその点を前提にご覧頂けますと幸いです。
以下では、前提事実(あくまで、本項目でご説明の便宜の点から入れているものです)を確認した上で、日本の裁判の審理の概要を概観したいと考えております。
このページの目次
1 前提事実の確認
本件でご説明する前提として、以下の内容を前提とさせて頂きます。
① 夫婦の取り決めで一方を主監護者とする合意が存在
② 上記合意を前提にある程度安定した監護状況の確立
③ ①の合意に反して、主監護者でない者が監護状況を作出
2 子をめぐる紛争における保全事件の審理について
本事件は、通常の審理まで待つと利益を害することから、早急に判断を求めるものです。
一方が監護状況作出したような状況で早急に引き渡した方が良いとの判断は、出にくいのが実情です。 実際によほど監護に問題があるといった状況がない限り(具体的には十分な育児ができていないといった場合です)、早急に子を引き渡せといったような判断が出ないのが実情です。もっとも、裁判例の蓄積によって「(当初の合意等を反故にして、)安定した他方親の監護状況から合意なく、監護状況を作出した場合」には、保全処分を認めて、早急な引き渡しの判断を行う傾向にあります。
したがって、本件の上記①から③の前提の下では、保全請求が認められる可能性が高いというのがこの種の事案を相当経験してきた私の感覚です。裁判所としては、緊急の必要を見ているというより、このような状況での監護状況の作出自体望ましくないとみているようで、上記①ないし③のような認定がされている下では、子の安定等はおよそ考慮要素にしない(したとしてもそれほど重要視していない)というのが私の感覚です。ただ、他方で、あまりに新たな監護状況の作出から時間が経過してしまうと、もはや保全の必要性自体存在しないといった判断になる可能性が高いと思われますので、その点について、注意が必要です。
3 子をめぐる紛争における本案事件の審理について
本事件は、いわゆる通常の審理になり、子の将来を考えいずれの元での発育が子の利益に適うかといった視点でみることになります。前述の保全処分とは別の手続になりますが、実際は並行して審理されることも少なくありませんし、保全事件が認められた場合に本案処分では引き渡しが認められない(保全処分と反対の判断になる)ことはあまり見受けられません。それこそ、上記のような現状の監護者の対応自体が、子の将来を考えても妥当でないというのが裁判所の根柢の考えに存在するように思います。
以上から、保全と本案は別物と考えるのは危険であり、上記のような審理を踏まえて、考えることが必要になってきます。
4 まとめ
上記のとおり、前提事実のような認定がなされてしまうと子の紛争においてお望みの判断を得る可能性は低いものと考えられます。
そこで前提事実のような認定がなされないための審判での活動、また早急な対応が必要になってきます。子の紛争における進行について悩まれた際は、お気軽にご相談頂けますと幸いです。
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