今回は慰謝料請求事案における解決事案をご紹介させて頂きます。本件は、仮に法的問題になると相当悩ましい問題を多く孕んでいた事案の解決についてです。
今でも様々な点を考慮できた解決事案だったように振り返って思っております。なお、本事案に限らず私が紹介している解決事案は実際の内容から一部変更した上でご紹介させて頂いております。
このページの目次
1 ご依頼前の状況
この方については、「相手方が許せない」と強くお話されていたのが今でも印象的です。その内容を聞いてみると、過去に配偶者と不貞行為が見つかり、その時は今後接触しないことを誓約し、次にそのような行為を行った場合は、予め決めた金額の支払いを行うといった内容での合意書を作成されておりました。そのような内容であるにもかかわらず、私が確認した限り、10回程度の接触があり、加えて相応の性交渉も確認できるとのことでした。その上で、本人間の話ではしらを切っているとのようでその点からも言語同断だなといった印象を受けていました。
そのようなお話を聞いて、私ももちろん相談者様と同じ感情を持ちましたし、それこそ一度の約束を守らないばかりかあげくの果てにまだ認めていないとは何事かという感情で、どうにかしないといけないなと考えたことを今でも覚えています。そんな私の感情が功を奏することになったのかは分かりませんが、その後相談者様は私に依頼することになり、早速相手方と交渉することになりました。
2 当初の状況
当初、相手方は本人であるとのお話でご依頼をお受けしましたので、相手方本人へ連絡したところ、弁護士に依頼するとの話で、相手方に就いた弁護士事務所より連絡がありました。
当初の弁護士の連絡では、事実関係についても争うといったものでご依頼者様と共々度肝を抜かれましたが、こちらが相応の証拠を持っている旨、争うのであれば訴訟も辞さない旨をお伝えして再度ご本人とお話して頂きたい旨お話したところ、金額に相応の変動があり、いきなり200万円程度の提示がありました(この金額自体不貞慰謝料の金額としては低くないです)。とはいえ、ご本人が作成していた契約書を基にする金額と著しく離れていた点、当初の交渉経緯からこれでは納得できないというご本人と私の考えが一致したこともあり、契約書をベースに細かく接触及び性交渉の回数で金額を算定しました。そうしたところ、500万円程度になったので実際にその金額を請求しました(契約書がない場合であれば破格です)。
3 解決に向けて
ご本人は相手方が許せないといった感情が強かったので、この500万円の請求でもある程度納得されていたようですが、私としては、ご依頼を受けた以上しっかり解決させなければいけないので、十分理論武装はしておりました。理論武装とは大袈裟に言いましたが、要は類似裁判例の確認と本件の契約書作成経緯の精査です。特に、事前に損害賠償額を定めた合意書についてその内容が有効になるかは作成経緯であったり、双方の事情、その金額等が考慮されます。本件については、その辺りを考慮して、十分類似裁判例を踏まえれば、戦えると考えたので上記請求を行いました。私の考えとして、いくら依頼者様のお考えとしても、あまりに無謀な請求は結局依頼者様の為にならないので踏みとどまるようお勧めすることが多いですが、本件ついては類似裁判例の分析の結果その必要はないと感じたので上記対応になりました。
その後、相手方代理人もこちらの主張について納得はしましたが、金銭的余裕がないことから、先に300万円を支払い残り150万円程度を比較的早期の分割で支払う提案がありました。こちらとしては、そこまでの金額になれば、資力の兼ね合いもあり裁判になったとしても必ずしも金銭を取れないと考え依頼者様とご相談し、受諾することにしました。
4 弁護士中村より本件を振り返って
本件について今振り返ると、何より良い形で合意書を作成して頂けたのが良かったと感じておりました。その上で、法的見解について、こちらの選択が前提であると思いますが、相手方の弁護士も似たような見解をもって下さったようで解決に進むことができたのが本件の解決の肝であったと思っております。結果として一定の減額はしていますが、裁判で請求の認容を取ったとしても執行の手間が煩雑であること、それほど早期の支払いを見込めないのでその点を考慮するとよい解決であったのではと考えております。
このように私の指針としては、私なりの見通しを踏まえて方針を示し、それに納得頂いてご依頼を決めて頂く形をとっております。どのような弁護士に依頼するか悩まれている方は一度弊所で方針を確認にいらして頂けますと幸いです。
兵庫県にお住まいの方はぜひご来所頂き、遠方にお住いの方も弊所はオンラインで対応しておりますので、一度気軽にご相談のご連絡を頂けますと幸いです。