熟慮期間経過後の相続放棄~相続解決事案~

 相続放棄の期間は、熟慮期間として、3か月の期間制限があります(民法915条1項)。
 本件は、3か月という相続放棄で定められている期間後に申立を行った事案です。

 この種の事案については、いかにやむを得ない事情を裁判所に分かってもらえるかが肝要かと思っておりますので、その点に着目して、本件も見て頂けますと幸いです。
 なお、本事案に限らず私が紹介している解決事案は実際の内容から一部変更した上でご紹介させて頂いております。

1 ご相談前の状況

 ご相談頂いたのは、被相続人の債権者から債務の支払い請求があったのを契機としてでした。その際には憔悴しており、こんなものあるとも思っていなかった、これを払う必要があるのかといったものでした。

 内容としては、本人が息子さんの事実上のご相談でした(その後息子さんにも確認しました)。お電話頂いた方の依頼者である息子さんからすれば別れた父の相続は放棄していたのですが、そのご両親(祖父にあたる方です)の財産というものでした。お話をしながら、よくよく債権者も請求してきたものですねとお話をしたのを今でも覚えています。

2 ご相談時の状況

 ご相談前に、過去の裁判例で、相続放棄に関する判断で、相続をあったことを「知った時」の解釈について、限定的に解釈していたことを見つけることが出来たので、それを基に依頼様とお話しました。内容としては、相続財産の存在について、知らなかったことがやむを得ないとみることが出来れば、やむを得なかった時点まで知らなかったことを前提に主張できるというものでした。

 そこで、裁判所に対して、本件における具体的事情を主張して、やむを得ないとして主張しましょう、とお伝えして、それについてご納得頂き一緒に進めることになりました。

3 解決に向けて

 いかに裁判所に分かってもらうかということに焦点をあてることを意識しましたので、本件については、知らないこともやむを得ないということを言及することを意識しました。

 具体的には、息子さんについて、別れた配偶者である父親とすら完全に没交渉であったこと、ましてやその父親である祖父とはなおのことそうであること、代襲関係を理解することを求めるのは酷であること、息子さんの年齢からしても酷であること(20歳になったばかりといった状況でした)等を整理した書面を裁判所に提出することにしました。

 その結果、比較的スムーズに裁判所より連絡があり、無事相続放棄が認められることになりました。

4 弁護士中村より本件を振り返って

 裁判所が判断する事案、言い換えれば相手方がいない事件については、裁判所lにいかに事情を分かってもらうかが肝要であると私自身思っております。

 そういう面では、裁判所に分かってもらうために、なるべく詳細かつ具体的な言及を心がけたのが結果としてよかったように改めて実感しております。

 裁判所からの連絡があり、ご報告差し上げた際に、本当に良かったといって頂いたのが今でも忘れられません。

 私の指針として、はじめの段階で方向性をお示しし、それにご納得頂いてから進行するよう心がけております。せっかく一緒に進めることになるのであれば、お互いにとって納得できる形で進行すべきと考えております。相続問題で悩まれたら、お気軽にお問合せ頂きますようご連絡をお待ちしております。

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