養育費の相場は?年収・子どもの人数別の金額や特に考慮すべき事情、不払いに備える方法を弁護士が解説
離婚離婚後に支払われる「養育費」は、金額の相場が分かりにくいと感じる方が多いです。
実際のところ、養育費には一律の相場はなく、父母双方の収入や子どもの年齢・人数などによって大きく異なります。
この記事では、裁判所の「養育費算定表」を基に、年収別・子ども別の目安金額や、相場から金額が増減するケース、不払いを防ぐ方法までを弁護士が分かりやすく解説します。
養育費の相場とは?一律の金額はない
養育費には「誰にでも当てはまる一律の相場」は存在しません。
父母それぞれの収入を基準に算定されるため、家庭ごとに大きく異なります。
よくある相談で「友人は毎月〇万円だったので自分も同じですか?」と聞かれることがありますが、実際は収入バランスによって全く違う金額になります。
そのため、「他人と同じ額」を基準に考えるのは危険です。
目次
養育費の定め方
養育費は、基本的に「父母と同程度の生活水準を子どもにも保障する」という考え方に基づき算定されます。
概ねの基準としては、
15歳以上の子ども:大人の生活費の約85%
14歳以下の子ども:大人の生活費の約62%
が必要とされています。
実際の金額は、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を用い、父母双方の収入を当てはめて決定されるのが一般的です。
婚姻費用との違い
「婚姻費用」と「養育費」は混同されがちですが、対象期間と支払い範囲が異なります。
婚姻費用:離婚前(別居中を含む)に、配偶者と子の生活費を含む
養育費:離婚後、子どもの生活費のみを対象
つまり、離婚前は婚姻費用、離婚後は養育費が問題になります。
父母の収入に応じた養育費相場の一例
義務者(子と同居しない親)の収入が400万円で権利者(子と同居する親)の収入が100万円で14歳以下の子が1人の場合
4万円から6万円程度になります。
金額の中での考慮は、実際の事情で増減することになります。
義務者収入:500万円、権利者収入100万円、14歳以下の子2人の場合
6万円から8万円程度になります。
義務者収入:600万円、権利者収入150万円、15歳以上及び14歳以下の子1人ずつの場合
8万円から10万円程度になります。
まとめ
あくまで上記は、収入群の一例を示したものに過ぎませんので、ご自身にあてはまる収入を裁判所のホームページに掲載されている養育費でご確認されることをお勧めします。
(参考:裁判所|養育費・婚姻費用算定表)
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
養育費の相場から大きく離れるケース
相場は、その言葉からも明らかなとおり、最大公約数的なよくあるものを羽いさせているものに過ぎません。そうなると、よくある状況からかけ離れている場合はかなり、相場から離れることになります。
代表的なものが以下のものですので、ご確認頂けますと幸いです。
私立中学校及び私立高校の費用
いわゆる算定表において、考慮されるのは公立学校の費用ということになります。そういう形ですので、私立分の学費は考慮されておりません。もっとも、裁判所及び現状の実務において、基本的には、私立に進学することに合意していたのであれば、分担の対象とするということになっております。明確な合意がなくとも、基本的には同居中私立学校に進学していたかで判断することが多いかなという印象です。
具体的な考慮の方法としては、算定された養育費から公立学校の教育費(統計上のものが用いられることが多いです)私立の学費の差額を踏まえて、双方の収入から義務者に負担させる割合を決定し、その金額を加算するといったイメージです。
こういった事案があるので場合は、金額も少なくないですし、私立学校に進学している方に関しては多くの場合、財産分与もそれなりの金額がある場合も多いので、弁護士に相談・依頼されることを強くお勧めします。
習い事の費用がある場合
基本的には、私立学校の費用と同様に考えますが、裁判所で争いになる際は、学校より厳密に「合意」の部分をみる傾向があるかと思います。
もっとも、習い事費用が私立学校ほど高額なことも少ないと思われますし、実際はいわゆる算定表の幅の範囲での考慮で足りることが多いのでその範囲で処理されることが少なくありません。
例えば、4~6万円の中での6万円にしましょうといった具合です。
具体的な考慮を厳密に言うと、習い事費用は考慮されておりませんので、実際の養育費に加算されるということになります。
私立の学費と違い、習い事で相当金額が変わるということが多いわけではありませんので、どういった主張をすべきかという意味での確認の上で、弁護士に相談される方が良いです。
医療費が相当かかっておりかつ今後もかかることが見込まれる場合
医療費についても一定額はいわゆる算定表で考慮されていること及び現在高額医療費の保障制度があることを考えれば、養育費の加算事由が存在するということはそれほど多くはありません。過去に若干統計上の考慮部分を超えると思われる点があって主張を試みましたが、本当に多少でしたので、算定表で十分考慮されているといった判断がされました。
実際の考慮の方法としては、私立学校の学費と同様に標準的な医療費との差額を取るといったイメージです。
義務者(支払う側)の収入が権利者より低い場合
いわゆる算定表は、権利者の収入の方が低いことを前提に作成されているものです。他方で、上記のとおりその前提と異なる状況である場合は、双方の同額の収入とみなして、進めることがほとんどです。
この場合は、ある種特殊な方法をとることが多いので、気を付ける必要があります。これを主張すべき場合でも相手方弁護士が主張しなかったというような場合も少なくなかったです。
養育費の不払いが起こってしまった場合の対応
事後的な対応(不払い後の対応)
養育費の支払いが滞った場合、**まずは法的な根拠(証拠書面)**があるかどうかで対応が異なります。
判決、和解調書、調停調書、審判書等の裁判所による書面がある場合
これらは裁判所の正式文書であり、強制執行が可能です。
滞納がある場合は、給与や預貯金の差押えを検討します。
この段階で弁護士へ相談することを強くおすすめします。
相手方との合意がある場合
合意書などで養育費を定めている場合は、裁判を起こすなどして、上記のような裁判所の決定にしてもらうことを考える必要があります。どのような方法がよいかも含めて弁護士と相談されて下さい。もっとも、訴訟をするとなると弁護士に依頼する必要が出てくるので状況によっては調停の利用もありうるかと思います。
相手方との合意を示すものがない場合
養育費分担調停も含めて検討される必要があります。
事前対応(不払いが生じにくくなる方法)
合意書の作成
合意書で明確にしていることで、多くの場合、しっかり払うことが多いです。合意書という以上、相手方の署名・押印があることがほとんどでそういった状況でそれをないがしろにすることはなかなかしんどいようで概ね払われるといった印象です。
公正証書の作成
基本的に合意書の一種ですが、公証役場において作成することになります。そういったところから、より格式の高いものといった認識を持つことも多いようで不払いのリスクはある程度軽減できますし、強制執行(相手方が不払いの際に強制的に取り立てる手段です)も可能です。
ただ、公正証書の作成費用が相応にかかってしまうのがデメリットです。もっとも、多くの公証役場では、ご自身の要望を伝えることである程度法的に問題のない文言で作成してくれることが多いので合意書を作成するという面ではメリットになるかと思います。
裁判手続きでの解決(離婚調停・養育費調停・離婚訴訟)
この方法での解決になると、しっかりと記録が残りかつ公正証書と同じように強制執行が手段として使えることになります。そういった意味で良いのですが、ご自身で進行するのが難しいという点もなかなかネックです。
しっかりとした合意を取得し、何かあった際も大丈夫という状況を作るためには、このように法的手続きを取っておくことも検討すべきですので、一度法律事務所へ連絡し弁護士へ相談することをお勧めします。
養育費の未回収を防ぐために…
上記のようにしっかりと公正証書もしくは裁判上の決定で強制執行ができるようにできていたとしても、相手方に金銭がないもしくは金銭のありかが分からない場合は絵にかいた餅になりかねません。
そういった意味でも可能であれば、
・相手方の職場
・相手方の預貯金の主要な部分
を把握しておくことが必要です。
特に継続的な支払いという意味で職場を知っているかというのは重要になりますので、これが分かるに越したことがありません。
もっとも、法整備で民事執行法が改正され、ある程度調査も可能にもなってはいますが、元から知っているには越したことはありませんので、そういう意味で可能であれば把握できる努力をされるに越したことはありません。
よくある質問
Q養育費の一括払いは可能ですか?
可能です。
ただ、相手方が合意することが前提である上、本来後から支払われるものを先に払うという性質上、法定利息分の割戻しをすべきというのが実務の扱いですので金額の調整が必要になる可能性があるかと思います。
もっとも、原則は分割払いですので、相手方との調整が必要になってきます。
Q双方の年収に変動があれば養育費の金額は変動しますか?
変動します。
もっとも、ある程度の幅の変動が条件になってきます。概ね2割程度と言われております。
実際に、養育費の増額調停もしくは減額調停を行う等の対処をする必要があることになります。
Q住宅ローンを支払っている場合は養育費に影響しますか?
直接的には影響しません。
ただ、協議の側面であったり調停、裁判上の和解等の局面において双方で調整することも少なくありません。
また、養育費とは少し離れますが、婚姻費用の場面では、ある種決まったルールで考慮されることになります(権利者である支払を受ける側の標準的な住居費相当を考慮することになります)。
Q 養育費はいつまで支払う必要がありますか?
原則として、20歳までとされることが多いです。この分野で裁判官がよく参照する書籍でも、基本的に成人年齢の引き下げは影響されないとされております。
ただ、18歳にした上で、子どもが未成熟子の期間(未成熟子の議論は複雑ではありますが、概ね学生の間とご理解頂ければと思います)までとすることも少なくありません。
Q相手方が不倫をしていた場合、養育費の金額は変わりますか
基本的には変わりません。
話合いの上で、一つの考慮要素にはなりえますが、直接的な影響を受けるものではありません。
Q養育費を支払う父親が給与所得者でなく自営業者である場合気を付けることはありますか。
自営業者は、独特な計算(基本的に所得を前提に計算するのですが、それ以外にも控除できるものとそうでないものという形で整理する必要があります)がありますので、その点をしっかり注意する必要があります。
まとめ
養育費には「誰にでも当てはまる相場」は存在しません。
大切なのは、あなた自身の家庭の収入状況・子どもの年齢・生活環境を踏まえて正確に算定することです。
また、不払いを防ぐためには、
・強制執行可能な公正証書・調停調書を作る
・相手方の職場などを把握しておく
ことが重要です。
知識のないまま感覚的に話し合うと、将来的にトラブルになることもあります。
不安がある場合は、早めに弁護士へ相談し、適切な養育費の金額と確保方法を検討しましょう。
参考リンク
裁判所|養育費・婚姻費用算定表(最新版)
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
法務省|公正証書について

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弁護士登録後、全国に支店のある事務所で4年程度勤務弁護士として執務しておりました。その際には、相続、慰謝料請求、離婚、監護権争い、労働審判、建築訴訟、不動産売買、消費貸借、契約に基づく代金支払い請求、交通事故、顧問先様の契約書チェックや日頃のご相談といった具合にそれこそ多種多様な事件に対応してきました。このような多種多様な事件の中で私が一貫して考えていたのは、対応方針、案件を進める方針に納得して依頼して頂くことでした。私自身、方針を明確に示さないこと、それに対して十分なご説明をせずご依頼頂くことはお客様にとって不誠実であると考えておりますので、その点に焦点を充てさせていただきます。また、方針の決定に際しては、お客様のご意向(金銭的補償に重点を置きたいのか、早期解決に重点を置きたいのか、違う部分に重点があるのか)が特に重要と考えておりますので、それについてご意向を反映させた方針を共有させて頂きたいと考えております。