離婚の親権者判断で子の意思は尊重されるのか【弁護士解説】
離婚結論:10歳を超えると子の意思はより重視される
離婚時の親権・監護権の判断では、子どもの意思も重要な判断要素です。
特に10歳を超える頃から、その意向が重視される傾向があります。
もっとも、年齢や発達状況によって考慮の程度は異なります。
目次
親権・監護権の基本的な考え方
親権は、離婚「後」、身上監護及び財産監護を主として行うものを指し、監護権は、離婚「前」の主として別居中に身上監護及び財産監護を主として行うということになります。
以下では、基本的に同様の基準で判断されることに鑑み、いずれにも共通する内容と考えて頂ければと思います。
親権・監護権を決める際の主な判断基準
基本的には、以下の事情が事案に応じて、考慮されて踏まえて判断されることになります。
同居中の主たる監護者及びその監護状況に問題があったか
⇒なければこの点は相応に考慮され政宇
現在の監護状況に問題がないか
⇒別居態様に問題がなければ相応に考慮されます
子どもの意思(10歳以上で重視)
⇒後述しますが、年齢によって相応に考慮される程度が変わります
きょうだい不分離の原則
⇒裁判所によって考慮の程度は変わります。
母性優先(ただし性別ではなく育児能力)
⇒どちらかというとこれまでの監護の程度とリンクしてみることになります。
面会交流への協力性
⇒よほどのものであれば考慮されるといったものです。
監護補助者の有無
⇒主たる監護者の監護能力の程度によるところです。
年齢別にみる「子の意思」の考慮のされ方
上記で挙げるとおり、子の意思は、親権者判断の考慮事由です。もっとも、私の経験上その年齢及び判断する裁判官によって相応にばらつきがあるのではといった印象を持っております。
6歳未満
裁判所は。子が種々の状況等を考慮して判断してみているとまでしない傾向が強いです。
もっとも、対象となるお子さんが、年齢相応でなく相当の発達をしており、自己の判断ができるとなった場合は。その子の意思が相当考慮されることになりますが、年齢相当の発達であったり年齢を加味すると多少発達が遅れているといった家庭裁判所調査官(教育学及び心理学等を専攻している家庭裁判所常駐の専門職で子からの聞き取り等を行います)の意見をみることは少なくないのですが、年齢をはるかに超える発達とみることはあまりないのが正直なところです。
6歳以上10歳未満
この年齢層からの意見は、加味するがそれほど重く見ず他の考慮要素も踏まえた判断ということが多いのが正直なところです。
多くの場合、一定程度自分の意見を言えるということが多いですが、どのようなものの影響を踏まえてかといったことを自己で理解意識していることが多いとまでは言えないので、その辺りも考慮してあまり裁判所も親権判断に直接的な影響を及ぼさせていないといった印象です。
10歳以上15歳未満
この辺りの年齢になると、子の意向という考慮要素が大きな比重を占めている傾向にあります。よほど不当といえるような事情がなければ、子の意向をある程度重視して決める傾向にあるかなというのが私の印象です。
過去の事例で、一方の親に嫌悪感を示しており(この件は母親に対してでした)、その点を相応に考慮して他方の配偶者が親権者という判断をしたものも現に存在します。特にこの件は、多少相手方である父親の影響を受けた点もあるにせよその内容が格段不当とまで言えないことから子の意思も踏まえて、父親が親権者であることが妥当であるとしておりました。
あくまで私の経験ベースにはなりますが、この年齢ぐらいになると相当に子の意向が重要な判断要素(言い換えると、他の考慮要素よりも比重の大きい考慮要素)になってくるといった印象を持っております。
15歳以上
この年齢を超えると、法律上も必要的に意見聴取を子から確認しないといけない上、裁判所は子の意向に相当重きをおいて判断しているように思います。
明文化されていないので何とも言えない点はありますが、印象的な点で述べると、子の意向が一方とはっきり意思を示し、その根拠に不当なものでなければ何かそれを覆す程度の事項の存在を求めているのではというのが私の印象です。
15歳になるとそれこそ自分のことを自分で判断できるという考えが根底にあるように思います。
子の意思の判断方法
多くの場合、子の意思は、裁判所に常駐する専門職の家庭裁判所調査官(専門的知見を有しているとされています)が子が会話可能であれば子からの会話内容、場合によっては交流状況等から専門的知見を踏まえて判断することが多いです。そうすることで、他方の親に言いにくいことをフォローすることも可能ですし、また言いたくないことを言わないで良い旨及び記録に残したくないことは残さない前提の下手続を進めることになるので、比較的ですが、お子さんのありのままの意思が反映される傾向が強いというのが私の印象です。
親権をめぐる手続の流れ
協議
まず、協議で親権に関する調整が可能か確認することが多いのが現状です。実際の見通しを踏まえてもなお、親権をどうしたいかといった点を踏まえて判断することになります。
もっとも、協議する対象の性質上、簡単に見通しを踏まえて判断できないことも少なくなく、親権は譲れないと考える方は結局協議で解決というのはできないことが多いです。
調停
正直調停も手続の性質上どこまでいってもお話合いの上での合意形成を目指すものですので、双方が親権獲得への思いが強い場合は、調停での解決が困難です。
ただ、調停の段階で調査官調査やこれを踏まえた裁判所の考えが明示されることも少なくなく、裁判所というある程度公平感を持った第三者からの提案であれば応じることも少なくないです。実際に親権や監護権の問題になると裁判所によって大きく考えが異なることもそれほど多くないのでその意味でこれを踏まえて判断するのも現実黄的とは思います。もっとも親権という性質上、なかなか合理的に見通しを踏まえた判断をするのも正直難しいので、本当に親権を争う場合は、調停での解決も難しいといったイメージです。
裁判
裁判になると裁判官が判断するので、それによって決定されます。これは当事者の納得感もあまり関係なく、これまでの判断傾向を踏まえて裁判官が判断します。
もっとも、これまで裁判所の判断が明確にされていなかったり後ろに判決が控えており、拒んでも自分の思いのとおり行かないということが分かると裁判上での和解という余地も出てきます。
以上が私の経験上のものですが、それこそ相手方の状況次第で手続きが変わっていきますので、ケースバイケースで裁判所に働きかけを行うとう考えていくことが必要になります。
親権が争点なっている場合は、一度弁護士への相談をお勧めします
見通しの確認が可能
親権を争うとどうしても解決までは相当の時間が掛かります。そこで親権を取得できる可能性がある程度あるのであればともかく、その可能性が低いのであれば方針の決定も変わるのではないでしょうか。
そういった実際の見通しを確認するという点で弁護士に相談するメリットは高いかと思います。
手続移行のタイミングの検討が可能
先ほど述べたように、協議から調停、裁判へ移行するには相手方が応じる可能性があるのか本当に次の手続まで争う必要があるのか、その他調査官調査を裁判所に求める必要があるのかなど状況で考えることが相当存在します。
そこを判断するのはかなり大変ですので、その種の手続に慣れている弁護士と相談して進めるのが良いのではというのが私の感覚です。
より効果的な主張ができる(言い換えると、子の意向を前面に押し出すタイミングが図れる)
ここまで述べてきたとおり、子の意向を前面に押し出した主張をする方が良い時もあれば、そこより他の部分を主張した方が良い場合もあります。また、早期に調査官調査を求めた方が良い場合もあれば、ある程度交流を行った上でこれをした方が良い場合もあります。
この辺りもケースバイケースの点が少なくないので、経験を有する弁護士と十分相談をすべきというところです。
親権に関連する離婚条件との関係
養育費
文字通り、子の養育費のための費用の分担ですのでこの点は親権をいずれが取得するかによって大きな影響が生じます。
いわゆる算定表は、習い事や私立学費、統計を超える医療費は加味されておりませんので、その点について十分検討する必要があります。
財産分与
財産分与の性質上、夫婦で形成した財産を分けるものですので、親権とは影響を生じません。もっとも、よく言われるのが、子の関係で自宅取得部分の調整を図るようにすることもありますが、この点はあくまで調整の際にあり得るというもので判決になると、実際のローンの関係や登記名義・資力等を前提に判断されることがほとんどです。
慰謝料
こちらも子どもの存在云々でそれほど影響は生じません。もっとも、子がいるから多少慰謝料に対する損害の程度が大きくなったという評価はあり得ます。ただ、みなさまが思っているほどではないことが多いです。
面会交流
裁判所のスタンスとしては、基本的に子と相手方を会わせた方が良いという考えを持っておりますので、その方向で調整しますが、親権者が拒むとなかなか調整が厳しいのが正直なところです。そういった意味で、なかなか時間を要する可能性が高いです。
こういう側面があるのでなるべく早期の面会実施で調整していくことが肝要であると個人的には思っております。
よくある質問
Q収入は親権取得に関係がありますか
ほとんど関係ありません。
その部分は養育費に調整すべきという考えを裁判所は持っておりますので、収入が高い方が親権を取得できるという訳でもありません。
Q原審の家庭裁判所の調査官は十分に調査を行っていません。高等裁判所での調査はあり得ますか
可能性としてあり得ますが、あまり期待できるものでもありません。
ほとんどの事件で家事事件の即時抗告審は、書面のみで判断されます。
もっとも、原審(家庭裁判所)の調査官調査について、そこで検出された事実(どのように触れ合っていたかといった部分や交流の様子)については、参照することが多いですが、調査官の意見としてどちらが監護すべき親権者となるべきというところは高等裁判所が自ら判断している傾向が強いです。現に、私が担当した案件で即時抗告で判断が変わったものはいずれも調査官調査の事実は参照した上で、評価については、全く参照せず、判断を行っておりました。
解決事例
受任前
この件について、面談時、相手方である妻に高校生の息子さんと中学生の娘さんと別居されて、子の意向を踏まえて進めたい(逆に言うと本当に子らが相手方との生活を望んでいるのであれば相手方の下で生活してもよい)とのことでした。
ご自身らで調停を終えており、相手方に裁判を起こされてからのご相談であったので、それではその手続きを通して、意向を確認しましょうといった方針でご依頼を受けました。
受任後
その後、息子さんから私の依頼者さん(父親です)に連絡があり、日々の相談等があったようで、そうであれば実際に会ってみてはどうですかといった話で、結局期日間で面会を行う等していました。
そうした中での調査官調査で、息子さんが依頼者さんと生活したいとの話があり、その点もしっかりと調査官調査で顕出されました。それを踏まえて、相手方も息子の意思ならということで親権をこちらの本人で進める形で調整をしてくれました。
事件を振り返って
たとえ離れていたとしても子にとって、両親ともかけがえのないものですし、ある程度の年齢の子の意向は十分尊重されるべきであると考えております。それを反映できる形で解決できた本件は良かったように思います。
もっとも、この件は、従前依頼者さんがそれほど家事をしていなかったこともあり(ただ、息子さんにとっては相当頼りになる相談相手ではあったようです)、裁判官から今後しっかり息子さんの為に家のことをして下さいねと言われておりました。期日が終わった後にこれから頑張りますと言われていたのが今でも印象に残っております。
まとめ
親権の判断において子の意向が反映されるかは年齢次第です。もっとも自分で判断できる年齢になれば、それを尊重するのが親のあるべき姿ではないかと個人的に思います。
子の意向を尊重した親権者の決定(今後法改正が入っているので、事実上一緒に生活する人と読み替えた方がよいかもしれません)が実現できるようこの点で悩まれたらお気軽にご相談ください。

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弁護士登録後、全国に支店のある事務所で4年程度勤務弁護士として執務しておりました。その際には、相続、慰謝料請求、離婚、監護権争い、労働審判、建築訴訟、不動産売買、消費貸借、契約に基づく代金支払い請求、交通事故、顧問先様の契約書チェックや日頃のご相談といった具合にそれこそ多種多様な事件に対応してきました。このような多種多様な事件の中で私が一貫して考えていたのは、対応方針、案件を進める方針に納得して依頼して頂くことでした。私自身、方針を明確に示さないこと、それに対して十分なご説明をせずご依頼頂くことはお客様にとって不誠実であると考えておりますので、その点に焦点を充てさせていただきます。また、方針の決定に際しては、お客様のご意向(金銭的補償に重点を置きたいのか、早期解決に重点を置きたいのか、違う部分に重点があるのか)が特に重要と考えておりますので、それについてご意向を反映させた方針を共有させて頂きたいと考えております。